12月号 行政対応の多様化

2024年12月11日

いまおこっていること

 私が福祉行政の事件を扱い始めてはや二十年。介護保険サービスにはじまり、障害福祉サービスや児童福祉サービス事業所の案件に拡大した。それは地域的にも広がった。

 今は障害福祉系の事業所の相談が多い。放課後等デイサービスや就労継続支援B型などだ。都道府県別でいえば、北海道は札幌、千歳、関東は甲信越が茨城、群馬、埼玉、東京、千葉、長野。中部は愛知県が多く、関西は神戸。九州は全県。少ないが各地の放課後等デイサービスの行政事件、行政相談を受任している。

 中国・四国は広島の事件があり来年判決になる。福岡と佐賀で行政訴訟、熊本で審査請求が係属しいる。北海道は今年、千歳の案件が終結した。

 また先月、京都の事業所から相談があった。訴訟になりそうだ。

 二〇年前から比べると内容も広がりを見せている。これまで受任していたのは主として、処分前の聴聞立会と処分後の処分取消し、又は審査請求だった。

 今では運営指導や監査中の相談が増えてきた。事業者の方が行政の動き、とくに処分のおそれに敏感になってきている。

 それに伴い、行政からの高額報酬返還の影響で福岡で事業所の法人破産申立てをし、開始決定を得た。 群馬県でも破産申し立ての準備をしている。

弁護士の行政対応の多様性

今、この分野は、弁護士にとって事件に応じた多様な対応力が求められている。 

 福祉事業所の法律問題を事業者からみた場合、内部の経営上の問題、従業員との労働法の問題、利用者との契約上の問題や施設職員らによる虐待の問題、行政対策など、実に多様だ。

 だが行政の指導監督の問題においては、指定取消などの行政処分の後にくる高額な報酬返還による経営破綻が最も重要だ。

 訴訟や審査請求といった古い争い方のほかに、利用者へのサービス提供を断絶させないために事業廃止と新規指定の取得をミックスした手法も大切だ。新規指定を別法人で取得したような場合、処分を受けた法人を破産清算させることも忘れてはらない。

 福祉事業の運営法人の破産件数は全国で200件くらいと思うが、行政が活発に徴収命令などの処分を発令するようになれば、これから増加する傾向にある。

 弁護士の対応もただ単に行政と争うというオールドタイプの紛争処理にとどまらず、事業所の再生や利用者サービスの継続性の確保といった多様な視点が求められている。

 福祉行政対応の歴史は浅く、法令の解釈適応について十分な検証がなされているとはいえないが、来年は、このような事件対応の多様性の視点を自覚した対応がますます必要となるだろう。