6月号 児発管・サビ管の研修要件

2024年06月11日

 児発管・サビ管の研修要件

 放課後等デイサービスの児童発達管理責任者(児発管)や障害者施設のサービス管理責任者(サビ管)は原則として研修要件を満たす必要がある。

 法令では,基礎研修を受講するときに実務経験5年が必要だ。ところが児発管等の研修要件は改正が多くてわかりにくい。①研修を受ける実務条件なのか,②実際に配置するときの実務経験なのかがわかりにくい。

 多くの事業者は,①の基礎研修を受ける要件ではなくて,②現実に配置するときまでに5年の実務経験があればよいと解釈しているようだ。つまり,実務を3年程度経験したころに研修を受けて,研修後にあと2年実務経験をつめば,それから児発管・サビ管に配置できると解釈している。

 ところが,法令は研修を受けるときに5年の事務経験が必要としているのだ。

 というのも今年に入って熊本市で事件が多発している。実は,熊本市の行政監査で,障害福祉課の職員が①を見落としていた。それが内部監査で指摘されたのだ。だから熊本市内の指定を受けている児童・障害福祉サービス事業所が,立て続けに高額の過誤調整を行政指導されている、と聞いた。

 児発管・サビ管が要件を満たさないで配置されていた場合,過去にさかのぼって減算となるからだ。

 児発管等の基礎研修の実施は,行政から委託を受けた団体が行うが,県ごとに実施されているから,開催日も開催方法も異なる。

 事業者からその件についての相談が増えた。行政も間違っていたのに,今頃なんで事業所の責任が問われるのか,という疑問だ。

争う方法

 減算に関する過誤調整は行政指導だ。行政指導は事業所の任意の協力を求めるだけで,処分性はない。

 そこで,任意に過誤調整に協力するかしないかについて,事業者の判断が求められる。ひとつには和解という手がある。過誤調整による公費の返還は,民法の不当利得返還の問題だ。返還するかしないか,その額はいくらにするかは合意による。つまり和解契約をすることになる。

 もうひとつは,民事裁判だ。行政指導は処分性がないから処分取消の訴えはできないが,民事上の債務確定訴訟ならできる。被告は行政だから,公法上の当事者訴訟とよばれる。裁判では,不当利得となるか否か。具体的に言えば,法令上の減算要件がどうなっていて,それに該当する事実があるかどうかが問われる。

 裁判の結果はどうなるか,やってみないと何とも言えないが,熊本市の場合は,障害福祉課でも実務経験5年の判断基準時について,見落としていたようだから,行政の落ち度がどう判断されるのか。それを事業者の落ち度ととするのは,個人的には異論がある,といいたい。