4月号 処分基準の考え方

行政は福祉サービス事業所に対する指導監督権限が付与されている。事業所に法令違反があると勧告・命令(公表),指定の効力の全部又は一部停止,指定取消しという段階田的処分をすることができる。しかし,どういう場合はどういう処分等をするのかは,事業者にはわかりない。軽微な事案なのに重たい処分が課されることもある。
処分等の基準はないのか。
厚生労働省は各自治体に対して,原則として,事業者が勧告・命令,そして勧告等にしたがわないときは,指定の効力全部または一部停止とするとし,いわゆる指定の一発取消しは例外だと通知していた。
そして,平成29年頃から国の主導により全国の処分事案の分析を通じて,一応の類型化が試みられた。それをまとめたのが,株式会社日本総研の報告として公表され,そのあと令和4年度に厚生労働省が「処分基準の考え方の例」を発出した。地方自治法245条の技術的助言とされているから,法的拘束力はないが,基本的な考え方が示されていることから,行政職員の現場では多様に使用されている。
とくに監査の際は,将来は処分を予定しているから,どういう事情が確認できたら,どういう処分に結び付くのか,という目安や標準になる。
そこでこの処分基準の考え方を検討してみる。
「処分基準の考え方の例」では,これまでこのよう実務的な検討はされていなかった。また,この処分基準が裁判所で裁量の逸脱濫用争点となったときに,どのように使われるのかが不明である
考えるに,この処分基準は,指定取消等を実施する場合の処分程度の目安となる処分基準例の作成を目的として実施されたようである。なぜなら改善勧告や改善報告にとどまって効力停止,指定取消処分に至らなかった事例は分析の対象外とされているからである。
調査の対象範囲
立入りとなったのは1708件のうち,改善報告が740件,改善勧告が341件改善命令が5件であるのに対し効力停止が103件,指定取消しが141件であった。
平成30年ころ,この日本総研の報告書を活用して,各自治体で処分基準を策定したり,行政処分をおこなったりする際の参考となると予想されたが,自治体では固有の処分基準を策定するところはまれである。
そこで令和4年度に厚生労働省では,前述の地方自治法245条の4の規定による「処分基準の考え方の例」を示している。たとえば不正請求を架空請求,水増し請求,加算・減算違反などに類型化したり,使い勝手がよいように工夫されていることから,次回以降に詳しく説明したい。平成28年実績では,処分となったのは244件。改善勧告・改善報告はその4倍にあたる1086件。
立入りとなったのは1708件のうち,改善報告が740件,改善勧告が341件改善命令が5件であるのに対し効力停止が103件,指定取消しが141件であった。
平成30年ころ,この日本総研の報告書を活用して,各自治体で処分基準を策定したり,行政処分をおこなったりする際の参考となると予想されたが,自治体では固有の処分基準を策定するところはまれである。
そこで令和4年度に厚生労働省では,前述の地方自治法245条の4の規定による「処分基準の考え方の例」を示している。たとえば不正請求を架空請求,水増し請求,加算・減算違反などに類型化したり,使い勝手がよいように工夫されていることから,次回以降に詳しく説明したい。