3月号 活発化する指導監査

当事務所は例年2月が暇だったが、最近はなぜかちがう。事件相談が相次いでいる。
先日など、山梨県のとある介護事業所がそこの市長から指定取消しを受け利用者を別の施設に移動させるよう命じられた。処分理由の中心は人格尊重義務違反だが、これには大きな問題があった。市側では高齢者の食事の量を減らしたなど施設内虐待を疑ったようだが,とんでもない誤認だ。その高齢者は糖尿病で食事制限されていた。
関西でも行政の動きは活発だ。兵庫,京都を中心に,障害者施設・児童福祉施設に対する行政監査が行なわれている。市役所が法人に報酬返還を求めるのはよくあるが,なんと法人の役員の個人資産をねらった仮差押えの事例が登場した。法人に徴収命令を発した同じ日に個人資産対して仮差押えを申し立てたのだ。
役員個人の差押えの根拠として,会社法の規定する第三者責任をあてはめ,その地裁が仮差押え決定を発令したものだ。保全異議の申し立てをし,現在進行中(だから詳細は述べることができない)。
全国的に見ても珍しいが,その影響力も大きいだろう。
訟提起と議会の同意
行政が事業所に報酬返還の行政指導をした場合,事業者側が法令の適用違反を理由として過誤返還に応じなかったら,行政はどのような手段をとることができるか。
これは過誤調整とか過誤返戻とかいわれる問題だ。
ほとんどの事業者は,過誤返戻ですますことができれば事業を継続できるため,文句をいうことは少ない。ほとんどのオーナーは,たとえ高額であろうが行政のいうとおりに返還すれば処分を免れると考えるようだ。
しかし,「一億円返還せよ」などといわれたらどうする?事業者が過誤返戻の行政指導に応じない場合は,さっそく問題がこじれる。
まず,法的にはどうすればよいか。
行政の多くは,民事訴訟を提起する方向で検討するようだ。民事訴訟を提起して判決を獲得し,確定判決による強制執行により権利の実現を図る方法だ。これは水道料金の支払い督促に応じない市民がいる場合などと同じ方法だ。
ただし,議会の同意が必要となる。地方自治法96条1項12号は,地公共団体の訴えの提起又は和解について,議会の同意があることを要件としている。
法律上むずかしい問題もあるようなので引き続き検討したいと思う。