2月号 生活保護と介護保険

2022年02月07日

Q、生活保護で介護は受けられますか?
A、受けることができます。

 生活保護の人は介護を受けられますか,とよく聞かれます。答えは,イエス。

 ではどんなふうに受けられるのか。

 まず,介護保険の基礎から説明します。家制度のもとでは高齢者介護は嫁の仕事でした。しかし,現在は様々な事情で,難しいし,国庫の財政が苦しくなったので,国民がお金を出し合い,要介護になったときは保険を使って必要な介護サービスを受けることができる仕組みをつくったのです。これが介護保険。

 生活保護の場合,介護扶助といいます(生保11条5号)。原則として65歳以上で,要介護又は要支援にならないと介護扶助は使えません(生保15条の2)。

 介護保険適用事業者とは,行政庁から特に指定を受けた事業者だけ。指定介護機関といいます(生保54条の2)。原則,利用料金の一部は自己負担。保険給付は1か月単位で上限があるから,保険だけでデイサービスに毎日利用するのは無理となります。

 では生活保護の人はどうなるか。65歳以上の保護受給者は,一般の人と同じ1号被保険者となります。保険料は生活扶助として国が負担します。利用者負担部分も国が負担するのです。ただし,給付限度額を超えると自己負担なので,受給者も生活扶助費のなかから自己負担となります。またおむつ代や食費は原則として介護保険から除外されているので,生活扶助の中から自己負担となるのです。

 生活扶助は現金支給ですが,介護扶助は医療扶助と同じく現物給付です(生保34条の2)。現金給付ではありません。介護券を発行してもらい,事業者に提出すると,介護サービスを受けることができるという仕組みです。

 有料老人ホームは介護施設ではないので,室料,食事代,その他必要経費は自己負担。生保の住宅扶助は3万300円(佐賀市)だから,いろいろ限定されることになります。電気水道ガス代含め3万円とは超低額。安い施設にしか入所は不可能となるでしょう。

 そもそも生活扶助の額は月額6万円程度だから(佐賀市),月額十万円以上かかる有料老人ホームに入居することは不可能。低価格の特別養護老人ホームは絶対的な対数が少ない。生保保護の人はどこに行けばよいのか。

 介護は現物給付だといっても,受給者はそれ以外の費用が出せない。生活扶助の月額6万円しかお金がない保護受給者にとって人並み以下の生活であることは変わりがありません。

 介護施設に入所している利用者が,生保受給者なのかそうでないのかは見ただけではわかりません。しかし,上限限度を超える介護を受けるのは無理だし,入所する施設の利用料は,生活扶助の月額6万円(部屋代を入れると9万円程度)が限界。

 これでは介護を受けられるといえるのか。

 平成26年国は無差別に生活扶助の引き下げを敢行し,佐賀地裁で現在取消の裁判中。今年判決が出る見通しです。