介護裁判新聞2月号

2020年03月02日

2020年の反撃(新型処分!?)

2000(平成12)年介護保険法が施行されて20年たちます。この間,行政処分のあり方も変わりました。

介護保険法の行政処分は,指定取消処分だけでした。2006(平18)年,指定更新制度が導入されて,行政処分も,勧告,命令,効力停止,指定取消と区分されました。介護予防や,地域密着型サービス事業の制度もスタートし,行政庁の処分裁量権が拡大されてきました。

2008(H20)年,コムスン事件の反省から,連座制が導入されました。そして,一つの事業所の指定取消処分の原因に組織的関与が認められることが要件とされました。

 行政処分の対象である事業者は。その立場の弱さから,泣き寝入りをすることも多かったのですが,反撃を試みる事業者も現れています。

 反撃のためには,事業者自ら法令に精通することが欠かせません。公費を支給されている立場にある限り,当然ですが,行政と法令の理解が食い違う場面も登場しています。

★新型処分の登場

最近の処分の中に,これまでと違う傾向のものがあります。新規利用受入停止,あるいは介護報酬の一定額以上の請求禁止という新型処分が増加しています。指定の効力の一部停止といわれるものです。指定の効力の一部停止の範囲内での行政裁量だというものと思います。

行政処分は,利用サービスの断絶を避ける必要がありますが,新型処分は,事業の継続を認めつつ,一方で,高額の過誤返戻をねらうことが可能です。

新規利用受入れ停止(一定期間)・介護報酬の一部制限は,現在の利用者のサービス提供は維持でき,報酬請求も可能ですが,高額の返還を強いられるおそれがあります。

新規利用の受け入れ停止というものが,指定の効力の一部停止という処分のひとつとして,認められるのかも疑問です。指定とは公費の支給を受ける権能にすぎないから受け入れ自体は制限できないとも考えられるからです。

これら新型処分は,事業者からみると,争うべきか迷います。介護報酬の一部返納ですめば,それは受け入れようと考える事業者がほとんどだからです。

このような事情を背景に,新型処分はこれから増加すると予測されます。これに対して,事業者側としては,より法令の理解力を高める必要があります。

実地指導や監査の場合に,行政との間で,法令違反の有無について争いが生じたときは,おたがいが詳細に主張を戦わせる必要が高まると予想されます。

介護保険は,我が国の法律制度の一つであることを,今一度想起して,2020年を実りある年にしたいものです。